Novels
連載中
完結
Short Story
梅乃湯WAR
男には絶対に負けられない戦いがある。
オフィス街に取り残されたように佇む、昔ながらの銭湯「梅の湯」。
熱すぎるお湯と、番台に立つ笑顔の看板娘・茜に惹かれ、宮川は毎日一番風呂を狙って通い詰めていた。
だが、ある日を境にその“特等席”を奪うライバルが現れる。
名は水瀬健一。
スマートで芝居がかった言動、だがどこか憎めないその男は、よりによって茜を気に入り、銭湯に現れるようになったのだ。
茜の「いらっしゃい」が聞きたい。
一番風呂に入りたい。
ただそれだけの理由で、サラリーマン二人が銭湯で火花を散らす毎日。
これは──とある中年男の、ちょっと切なくて、なんだか温かい“絶対に負けられない戦い”の記録。
雛鳥たちのサーカス
サーカスが来るよ。輝く幻想を引き連れて。残るものはなアんにも無い。
迷子の心を連れ去って、
世界のほつれを縫い直して、
残酷で、優しい幻を見せてあげる──。
これは、現実の裏側でひっそり開かれる、
壊れかけた心と失われた声のための、演目たち。
ようこそ、幻想の檻へ。
雛鳥たちは羽ばたかない。
そのかわり、サーカスのように喧しく、あなたの中に囁き続ける──。
あの恋の話をしよう。
そっとそっと。内緒話のように。
叶わなかった想い。
届かないままの声。
過ぎていく時間のなかで、確かに胸を焦がした“あの瞬間”。
本当は言えなかった「好き」も、置き去りにしたままの涙も、
今ならやっと、静かに話せる気がする。
これは、過去の恋を見つめ直す小さな物語たち。
誰にも話せなかった恋の記憶を、まるで夜の端っこでそっと囁くように──。
赤い人
小さな頃から度々視る夢がある。
窓の外は怖い。
部屋の角は、もっと怖い
惑星に抱く
地球儀を回せば、還る場所が見える──。
船体を焦がす彗星の光。
静かに迫る破滅の軌道の中、二人の男は青く輝く星を見つめていた。
一緒に育ち、同じ人を愛し、そして今――
たった一つの星を守るため、共にその胸に誓う。
この美しい惑星を守るためなら、命さえ惜しくはない。
それがお前と一緒なら、なおさら。
地球の重力よりも確かに、彼を惹きつけていたのは、
その隣にある笑顔だった。
放浪者
旅人は帰らない。それはこの世界の決まりごとの様なものだった。
砂と風の世界で、若き放浪者ヴィスタは迷う。
地図は古び、方角は揺らぎ、信じた指針は当てにならない。
それでも彼は歩く。
すべてを背に負い、頼れるのは共に旅を続けてきた相棒ノーブル──言葉を持たぬラクダだけ。
人生で得た経験や技術は、まるで旅の荷物のようなもの。
渇きの中では重たく、意味さえ見失いかける。
けれど、あの丘の向こうにそれを価値あるものへと変える場所がきっとあると、彼は信じていた。
これは、地図にない未来を目指す、ひとりと一匹の物語。
彼らが駆けた赤い砂漠の絨毯の先に、あなたのオアシスもきっとある──。
星塗り
……彗星よ。彗星を捕まえたの。
「空を塗る」──それは、この星に命を宿す最初の仕事。
未開の地で彗星を捕まえ、誰も持たない色を手にした少女・宮。
静かに空を見上げ、青ばかりを集める少年・帳。
ふたりの描く空には、誰も知らない青が浮かんでいた。
夜空を塗る藍は、癒しの色。
そして──誰かの瞳の色。
一度きりの星塗りの授業で、ふたりが見つけた色彩と、
触れられない想いのかたち。
Other
夜間書庫
昼間見ると恥ずかしくなる系のやつ。
夜中に浮かんだ厨二的な言葉を書き連ねるところ。白黒入りまじり。