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あらすじ

遥か古代、海と森に抱かれた珠流可(するが)の村。

『出来損ない』と揶揄され、占いも祈祷もままならぬ巫女・千沙帆(ちさほ)は、
自分の居場所を見つけられずにいた。

「私を必要としている人なんて誰もいないわ。――私自身でさえも」

ある夜、千沙帆は海辺で溺れかけた男を助ける。
銀の髪に、月光を宿した黄金の瞳。
人ならざる美貌を纏う青年・穂積(ほづみ)。
彼は、神にも人にもなれぬ未熟な海神だった。

幼馴染の若長・隼彦の、愛と支配の境を失った執着。
そして、村を飲み込む災厄の足音。
当たり前の日々が、ゆっくりと崩れていく。

「喰う」という禁忌が二人の運命を絡め取るとき、千沙帆は何を選ぶのか――。

登場人物

千沙帆(ちさほ)

珠流可の巫女。
孤児として首長(おびと)である武彦に引き取られ、隼彦・真問と共に育つ。
歴代の巫女より力が弱く、「巫女とは名ばかり」と揶揄されている。
自分の居場所を探し続ける少女。

穂積(ほづみ)

銀の髪に黄金の瞳を持つ青年。
物を食べることができず、完全な神になれぬ未熟な海神。
人の道理を知らず、千沙帆に導かれながら初めて「人の温もり」を知っていく。

隼彦(はやひこ)

首長の長男にして次期首長。
千沙帆の幼馴染。
人をまとめる求心力を持つ海の男だが、千沙帆への想いは愛と支配の境を見失っている。

真問(まとい)

穏やかな物腰の少年。
兄にできないことを自分が担うと決め、冷静に村の行く末を見据えている。